難聴と認知症の深い関係

認知症は誰もが関わる可能性のある身近な病気です

認知症は、脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下して日常生活全般に支障が出てくる状態をいいます。年をとるほど認知症になりやすくなります。
日本では、6 5 歳以上で認知症の人の数は約6 0 0 万人( 2 0 2 0 年現在)と推測され、2 0 2 5 年には約7 0 0 万人( 高齢者の5 人に1 人)が認知症になると予測されています。(厚生労働省ホームページより)
今や認知症は誰もが関わる可能性のある身近な病気です。

難聴は認知症発症にかかわる重要な因子のひとつです

厚生労働省では、団塊の世代が7 5 歳以上となる2 0 2 5 年を見据えて、「認知症施策推進総合戦略」新オレンジプランを策定しました。
その中で「認知症の発症予防の推進」として以下をあげています。

認知症発症のうち医学的介入が可能な割合は約40%といわれています。最も割合の多いものとして「難聴」をあげています。
難聴の治療が認知症予防としても効果があることがわかります。

G Livingston, J Huntley, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission. Lancet. 2020 Aug 8;396(10248):413-446

難聴と認知症、うつ病

難聴が進行すると、コミュニケーション障害が起きやすくなります。
それによって、孤立、身体活動の低下による社会活動の減少を引き起こします。うつ病などの原因になる場合もあります。
認知症の危険因子として大きな影響を及ぼすもののひとつが難聴なのです。

難聴の程度と認知機能の関係を解析したところ、25dB聴力が低下している人の認知機能低下は、6.8歳上の人とほぼ同じであることが試算されています。難聴が認知機能低下に大きく影響することがわかります。

Lin FR: Hearing loss and cognition in the Baltimore Longitudinal Study in Aging.  Neuropsychology 25: 763-770, 2011.  より

聞こえの重要性

聴覚は、言語や思考、情動にも深く関わっておりコミュニケーション機能の中枢としてとても重要な感覚です。
 

耳が聞こえないということは、目が見えないことより重大だとは言わないまでも、より深刻で複雑だ。かけがえのない刺激である人間の声(言語をもたらし思考のきっかけとなりえる声)が伝わってこないからだ。
ヘレンケラーも「もし、神様が一つの能力を授けてくださるのであれば、聞こえるようになりたい。一度でいいから母親の声をきいてみたい。」と言っています。

難聴の対策は?

難聴治療のひとつに補聴器があります。補聴器を使うには、補聴器に慣れるトレーニングが必要です。
補聴器装用によって、高齢者のうつ病発症の危険度が下がるという報告があります。
認知症予防にも補聴器装用が役に立つ可能性が高いと思われますが、これについては、様々な研究が進められています。
医療機関にて自分の耳の状態、聞き取りの状態を検査して、その状態にあった補聴器とトレーニングを相談してみると良いでしょう。

 政府広報オンライン 暮らしに役立つ情報 知っておきたい認知症の基本より 

https://www.gov-online.go.jp/article/202501/entry-7013.html

監修

済生会宇都宮病院 耳鼻咽喉科
主任診療科長・聴覚センター長

医師

新田 清一

済生会宇都宮病院 耳鼻咽喉科

言語聴覚士

鈴木 大介

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